旅館業の営業許可を取得するためには、細かな手続きや設備の要件を満たす必要があります。特に、物件の構造や周囲の環境、施設の設備が法令や基準に適合しているかを確認することが重要です。自治体によってルールが異なる場合がありますが、ここでは江東区保健所で行われた事前相談の内容を参考に、許可申請に際して押さえておくべき注意点を詳しく解説します。
1. 図面と環境調査
旅館業の営業許可を申請する際には、物件の図面の提出が求められます。図面には物件の構造や使用する目的、設備の配置などが詳細に記載されている必要があります。
また、物件の半径110メートル以内に学校や公園などの公共施設が存在する場合、保健所が環境調査を実施します。この調査の目的は、旅館の営業が周囲の環境に悪影響を及ぼさないかどうかを判断することです。
例えば、騒音や交通の影響が懸念される場合は、営業許可が下りない可能性もあります。地域社会への影響を最小限に抑えるためにも、事前の確認が重要です。
2. 設備に関する詳細な要件
設備面での要件は、以下のように具体的に定められています。これらの基準を満たさなければ、営業許可は取得できません。
・客室面積
客室の広さは、布団を使用する場合は最低7平米、ベッドを使用する場合は最低9平米が必要です。この基準を満たしていない場合は、設備の再調整や改築が求められることもあります。
・寝具とリネンの保存場所
施錠可能な戸棚に寝具やリネンを保管し、安全で清潔な管理が求められます。これは、宿泊客に快適で衛生的な環境を提供するために重要です。
・キッチン設備
宿泊施設にキッチンを設ける場合、ガスコンロの設置が求められ、使用方法を日本語と英語で記載した案内を掲示することが推奨されます。
・照明
客室内の照明は、40ルクス以上の明るさが必要です。これにより、宿泊者が安心して部屋を利用できる環境が整えられます。
・排水設備
特に古い設備がある場合、排水の効率を考慮して必要に応じて交換が求められます。洗濯機の排水も適切に処理されるよう確認が必要です。
・トイレと洗面設備
複数のグループが宿泊する場合、各グループに応じたトイレの数を確保することが必要です。また、トイレ近くには手洗い場を設け、常に清潔な状態を維持することが求められます。
3. 玄関帳場と無人対応
無人でのチェックイン対応が可能な玄関帳場を設置する場合は、緊急時に迅速に対応できる体制を整えておくことが必要です。具体的には、従業員が徒歩で10分以内に現場に駆けつけられるような対応を求められています。エレベーターの運行時間も重要な要素で、長時間の待機が必要な場合は対応策を講じる必要があります。
4. 鍵の受け渡しと本人確認
電子キーやパスコードを使用する場合でも、必ず宿泊者に対して口頭でパスコードを伝えることが求められます。本人確認については、パスポートと宿泊者の顔を照合できるシステムを導入し、リアルタイムで確認することでセキュリティを確保します。
5. 駆けつけ業務と契約内容
駆けつけ業務に関しては、明確な契約書を作成し、責任の所在を明確にしておくことが重要です。契約内容には、駆けつけができなかった場合の責任や対応方法についても具体的に記載し、トラブルを未然に防ぐ対策を講じる必要があります。
6. 宿泊カードと外国人対応
宿泊カードには、予約時に詳細な情報を記入してもらい、チェックイン時に確認を行います。外国人宿泊者の場合、パスポートの写しを保管することが法令で義務付けられています。対面やオンラインでのチェックイン時に適切に本人確認を行い、安全かつスムーズな対応を心掛けましょう。
7. 表札と看板
旅館の表札や看板は、申請時に届け出た名称と一致させることが求められます。また、看板の設置場所や高さについても規定があり、申請時に証拠写真を提出する必要があります。これにより、地域の景観や周囲の住民に対しての配慮が求められます。
8. 事前周知制度
営業を開始する前に、近隣住民やテナントに対して事前に通知を行うことが求められます。通知が困難な場合には、ポストに投函する方法も認められており、説明会の開催も推奨されています。地域の住民との良好な関係を築くためには、丁寧な説明と対応が重要です。
9. 消防設備
旅館業の営業許可を取得するためには、消防設備が法令に適合していることが確認される必要があります。消防法令適合通知書の取得には時間がかかる場合があるため、計画的に準備を進めることが求められます。また、バルコニーの使用については、夜間の利用を避けるなどの配慮が必要です。
10. その他の注意点
リフォームの内容については、詳細に確認し、必要に応じて保健所や関連機関に連絡を取ることが推奨されます。また、近隣住民への挨拶回りを丁寧に行い、地域の理解を得ることが重要です。
まとめ
旅館業の営業許可を取得するためには、各種法令や設備要件をしっかりと理解し、準備を整えることが必要です。特に、無人対応や駆けつけ業務に関する体制の整備は、宿泊者の安全と快適な滞在を確保するために欠かせません。これらのポイントをしっかりと押さえ、事前準備を万全に行って、スムーズな申請手続きにつなげていただければと思います。
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