昨今、民泊をめぐって宿泊客のマナー問題から事業者と近隣住民とのトラブルが後を絶たず、民泊に対する印象が悪化しています。しかし、民泊を単なる「宿泊施設」としてではなく、「まちづくりに貢献するインフラ」と捉え直すことで、近隣トラブルやオーバーツーリズムといった問題を乗り越え、持続可能なまちづくりの将来像を描くことが可能です。
その可能性は主に「空き家・遊休不動産の活用」「地域経済の活性化」「関係人口の創出と移住のきっかけ」「地域資源・文化の発信」の4つの柱で具現化されます。本記事では、民泊が単なる宿泊施設という枠を超えて、地域に新たな価値を生み出す可能性について考えます。
1. 空き家・遊休不動産の活用
まちづくりと民泊は、適切に連携させることで高い親和性を発揮し、地域に多様なメリットをもたらす可能性があります。民泊は単なる宿泊施設不足の解消にとどまらず、地域の社会課題解決や経済活性化の有効な手段として活用され始めています。例えば神奈川県横浜市では、一戸建て空き家数が24,700戸(令和5(2023)年「住宅・土地統計調査」より)と関東地方の政令指定都市では群を抜いて多く、その活用方法につき、官民共同でプロジェクトが進められています。
民泊は少子高齢化が進む多くの地域が抱える空き家問題の解決に貢献します。
■	資産の有効活用:放置されていた空き家や空き店舗を民泊施設としてリノベーションすることで、収益を生む資産に変えることが可能です。これにより、建物の維持管理が行き届き、地域の景観維持にも役立ちます。
■	固定資産税・維持費の軽減:収益を得ることで、所有者が負担する固定資産税や維持管理費を賄うことが可能になります。
2. 地域経済の活性化
宿泊客の消費行動を通じて、地域全体に経済効果を波及させます。
■	消費の拡大:宿泊客は地元の飲食店、小売店、観光施設、交通機関などを利用するため、地域内の消費を促します。
■	新たな雇用の創出:施設の清掃、リネン交換、ゲスト対応などを地域住民に委託することで、小さくても確かな雇用や収入源が生まれます。
■	滞在型観光の促進:民泊はホテルよりも長期滞在しやすい傾向があり、特にインバウンドや若年層の長期滞在型観光ニーズを満たし、より多くの消費を地域にもたらします。特に日帰り観光客が多く空き家も多い地域にとって、空き家解消と宿泊施設稼働に伴う滞在者による消費行動による宿泊施設周辺地域への経済的な貢献により、新たな雇用の創出にも繋がることが期待されます。
3. 関係人口の創出と移住のきっかけ
民泊は、地域と観光客との間に深い接点を提供します。
■	交流機会の拡大:ホスト(宿泊事業者)が地域の魅力を直接伝えたり、地元住民との交流の場が生まれたりすることで、観光客は「暮らすように旅をする」体験ができます。
■	関係人口・移住への貢献:地域での生活を体験することで、その地域に愛着を持つ「関係人口」が増加し、将来的に移住のきっかけとなる可能性も生まれます(例:自治体が移住体験住宅を民泊で利用可能にする事例など)。その結果、地域経済の発展、自治体の税収の増加、事業者の収益向上の「三方良し」の好循環が期待されます。
4. 地域資源・文化の発信
地域の固有の魅力を観光資源化する役割を担います。
■	体験型観光の推進:農作業、伝統文化、地元の祭り、食文化など、地域の特色を活かした体験型プログラムと民泊を連携させることで、施設の魅力向上と地域文化の継承・発信につながります。
■	観光客層の多様化:宿泊施設が少ないために「通過型」だった観光地に、民泊施設を整備することで宿泊客を呼び込み、観光地としての恩恵を享受できるようになります。
例えば2025年4月から10月まで開催されていた大阪・関西万博や、2027年3月19日から9月26日に横浜市旭区・瀬谷区で開催予定の2027年国際園芸博覧会といった大型イベント開催時には、周辺地域に多くの来訪者が予想され、宿泊施設が不足します。
地元の方にとっては「当たり前」である観光資源は、それ以外の方にとっては貴重で魅力的な観光資源であり、地域資源・文化・コンテンツもセットで発信することで、地域のプレゼンス向上に寄与する可能性があります。
まとめ
地域に寄り添う経営は、民泊事業を長く継続していくための最も重要な要素です。今後は法的な手続きに加え、地域住民との関係構築に積極的に取り組む姿勢が求められます。SATO行政書士法人は、皆様の事業が地域に受け入れられ、地域と共に発展していくためのお手伝いをさせていただきます。ご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
【引用元】
  横浜市建築局住宅政策課「第23回空家等対策協議会「令和5年住宅・土地統計調査の結果」について」(2025年4月15日)
 SATO行政書士法人では民泊に関するご相談や申請のサポートを行っております。スムーズな申請や活用のための提案などを行っておりますので、お気軽にご相談ください。
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