旅館・ホテル営業許可

旅館業とは?

旅館・ホテル営業許可

「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」となっています。この宿泊料は名目によらず実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるものも含まれ、休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費も宿泊料とみなされます。

旅館業には、「旅館・ホテル営業」、「簡易宿所営業」、「下宿営業」の3つの種類があり、旅館・ホテル営業は「施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの。」に該当します。

2018年の改正前は、和式の構造及び設備を主とし客室数は5以上必要な旅館営業、洋式の構造及び設備を主とし客室数が10以上必要なホテル営業に分けられていましたが、2018年6月15日に「旅館営業」と「ホテル営業」の営業種別が「旅館・ホテル営業」に統合されました。

施行期日は、住宅宿泊事業法(民泊新法)と同じ日で、同時に最低客室数の基準を撤廃し、構造設備の要件を緩和するほか、緊急時の駆け付け、ビデオカメラによる本人確認などを条件に、玄関帳場・フロントを設置しないことも認めるといった内容で、一戸建て貸切旅館営業(分散型古民家ホテルなど)が可能になるなど大きな変革を伴った法改正となりました。

一戸建て貸切旅館を営業する場合は、簡易宿所の許可や民泊の届出でも営業できる場合があります。

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旅館・ホテル営業をはじめよう!

旅館・ホテル営業許可を受けるためには様々な要件がありますが、まず、

  1. その場所は旅館・ホテル営業ができる場所ですか?
  2. その建物は旅館・ホテル営業ができる建物ですか?

を確認しましょう。

① その場所は旅館・ホテル営業ができる場所ですか?

皆様が住む土地、営業を行っている土地には「用途地域」という都市計画法に基づいた制限がされています。用途地域は13種類あり、そのうち、○○住居専用地域に該当する場合や、工業地域、工業専用地域においては営業をすることはできません。さらに、学校や保育園などの敷地周囲約100m区域内で営業しようとする場合に事前の承認が必要。となる場合もあります。

旅館・ホテル営業の際に別途営業許可を受けたいと考えている場合には学校、保育園などが近くにあると完全にその許可を受けられない場合もあります。

また、場所によっては「市街化調整区域」に該当する場合もあります。これは、都市計画法に基づいて設定された、「無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときに定める区域区分」となっています。

原則として、新たに建築物を建てたり、増築する事を極力抑えなければならない地域、事業の開始が難しい場所。自治体がこの場所は街にしたくないなと考えている場所という事になります。

ただし、100%市街化調整区域での旅館・ホテル営業はダメ!という訳では無いようで、「観光資源その他の資源の有効な利用上必要な建築物」という事で自治体からお許しが出れば可能となる場合もあるようです。

この辺りは自治体の判断が最も重要ですので、もし営業したい場所が市街化調整区域にあるのであれば必ず事前に相談をしましょう。

用途地域の一覧表、黄色く塗っている地域が旅館・ホテル営業が可能な地域です。

住居系
第一種低層住居専用地域 低層住宅のための地域です。小規模なお店や事務所を兼ねた住宅や、小中学校などが建てられます。
第二種低層住居専用地域 主に低層住宅のための地域です。小中学校のほか、150㎡までの一定のお店などが建てられます。
第一種中高層住居専用地域 中高層住宅のための地域です。病院、大学、500㎡までの一定のお店などが建てられます。
第二種中高層住居専用地域 主に中高層住宅のための地域です。病院、大学などのほか、1,500㎡までの一定のお店や事務所など必要な利便施設が建てられます。
第一種住居地域 住居の環境を守るための地域です。3,000㎡までの店舗、事務所、ホテルなどは建てられます。
第二種住居地域 主に住居の環境を守るための地域です。店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどは建てられます。
準住居地域 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住宅の環境を保護するための地域です。
田園住居地域 農業と調和した低層住宅の環境を守るための地域です。第一種・第二種低層住宅専用地域と同じ内容の制限があり、ホテルは建てられません。
商業系
近隣商業地域 まわりの住民が日用品の買物などをするための地域です。 住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられます。
商業地域 銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域です。 住宅や小規模の工場も建てられます。
工業系
準工業地域 主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域です。 危険性、環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんど建てられます。
工業地域 どんな工場でも建てられる地域です。 住宅やお店は建てられますが、学校、病院、ホテルなどは建てられません。
工業専用地域 工場のための地域です。 どんな工場でも建てられますが、住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てられません。

 周囲100m区域内にあると制限がされる場合がある施設

学校教育法第一条に規定する学校(大学を除く)
幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校
就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園
幼保連携型認定こども園
児童福祉法第七条第一項に規定する児童福祉施設
助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター
社会教育法第二条に規定する社会教育に関する施設その他の施設で、前二号に掲げる施設に類するものとして都道府県の条例で定めるもの
社会教育とは、学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及びレクリエーシヨンの活動を含む。) 具体的には、図書館、公民館、博物館、スポーツ施設など。



② その建物は旅館・ホテル営業ができる建物ですか?

建物の構造についても制限があります。例えば客室の床面積、これにも制限があり、定められた面積以上でなければなりませんし、窓も適切な大きさのものが必要です。

玄関帳場(フロント)については無くても大丈夫になりましたが、駐車施設から直接部屋に行ける構造ではダメで、必ず共用廊下などを通って客室に出入りするように。などの決まりがある場合があります。

建物については旅館業法だけでなく建築基準法や消防法も関わってきますので、新築建物で旅館・ホテル営業を行おうとする場合、事前の確認は必須です。

いざ建物が完成してから許可を受ける事ができないなんて事が判明した場合、大規模な追加工事や最悪そのまま諦める。なんていう事があるかもしれません。

元々旅館・ホテル営業を行っていた建物を内装工事して使うから大丈夫だろう。なんていうもの少々危険。前経営者が許可を受けた時は問題無かったが、その後の法令や周囲の変化により許可が受けられない可能性は0ではありません、営業を開始しようとする場合、事前の確認は大事です、必ず確認しましょう。

※上記内容は地域の条例により別の定めがされている場合もあります。

旅館・ホテル営業許可だけで大丈夫?

旅館・ホテルの営業をするにあたって、同施設内でレストランの営業やお土産も売りたい、遅くまでお酒も飲めるにしたいしレストランで作るケーキのお持ち帰りとかもしたいよね。や、温泉やフィットネスジムも作りたい。

なんなら芸妓さんを呼んでおもてなしをしてもらおう!と、お客様を呼び込むために色々なアイディアが出てくることでしょう。もちろん、これらを行うためには営業許可が必要です。一部必要でないものも含まれていますが。

① 飲食店営業許可

カフェ、レストラン、居酒屋などの営業といったような、飲食物を提供しようとする場合に必要な許可です。料理を提供するだけではなく、お酒の栓を開けて提供。これだけでも飲食店の営業許可が必要になる場合があります。ちなみに栓を開けずにお酒を提供したい場合は、酒類販売免許の取得を検討しましょう。

外部で購入等した既製品を加熱する、皿に盛り付けるというのも飲食店営業許可が必要な「調理」に該当するとされています。

また、民泊などのように施設に設置されているキッチンを、宿泊者が自ら利用して調理を行う場合については、飲食店営業許可は不要とされている場合がほとんどかと思います。

ただし、その調理の為の食材を販売したい場合には飲食店営業許可とは別の手続きが必要になる場合がありますので、提供したいサービスに応じて適切な営業許可を検討しましょう。もしかすると、受けようとする許可によっては施設基準や設備基準によって許可が得られないというような事もあるかもしれませんので、事前に確認は大事です。

酌をするなど接待行為に該当する場合や12時以降もお酒を提供する場合は、風営法に係る許可、届出が必要になる事もあります。

飲食店営業許可の詳細はこちら

② 風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業届

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第1項1号に係る許可(風営法1号許可)は、接待を伴う飲食店を営業するために必要な許可で、ホテル内でスナックなど営業したい場合に必要になります。コンパニオンや芸妓さんをホテル側が呼んでサービスとして提供する場合もこの許可が必要な場合があります。

この許可が必要な要件として「接待行為」に該当する行為を行うかどうか、というところが重要になりますが、この接待は「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と法律上定義されています。歓楽的雰囲気とは一体?というところですが、これをさらに紐解きますと、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準」に基準が示されています。

この意味は、営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して3の各号に掲げるような興趣を添える会話やサービス等を行うことをいう。言い換えれば、特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うことである。


3の各号では、談笑・お酌等、ショー等、歌唱等、ダンス、遊戯等、その他と設定され、それぞれについて接待の判断基準を示しています。

談笑・お酌等の項目では、逆に接待行為に当たらない場合として、「お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為、客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為及びこれらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為」と記載されています。厳密に言うと、ただ隣に座らなければ良いという訳ではなさそうですね。

この許可を得なくても良いためにはどのようなサービス提供、対策が必要なのかというところも大事です、後から提供しているサービス内容であれば風営法1号許可が必要だ。と判断されてしまうと、最悪の場合許可が得られるまでの期間、当該場所での営業ができなくなってしまうかもしれません。

このような事態を避けるためにも、どのような行為が接待行為に該当するのか事前に把握しましょう。もし12時以降もお酒を提供したいなら深夜酒類提供飲食店営業届が必要ですが、こちらの届出の場合、接待行為をすることはできません。

また、風営法1号許可を受ける場合、基本的には深夜(午前0時から午前6時までの時間)の営業は禁止されていますが、自治体によってはもう少し延長される場合があります。

③ 食品販売・食品製造業

飲食店にて提供する飲食物をお持ち帰り(テイクアウト)していただく分には飲食店営業許可で足りますが、包装済みの魚介や食肉を販売したい場合や、提供しているケーキを店舗以外で販売したい場合などに必要になることがあります。こちらも事前に提供したい内容を整理し、そのために必要な許可、届出を把握しましょう。

特に、食品製造許可では、製造場所を他と区画と壁でしっかりと仕切られていなければならないという場合もあります。こういった工事を後から追加するのは困難な場合が多いですので、気をつけなければならないところになります。

なお、食品販売に関連するお話としてお酒の話を一つ。ホテルの宿泊フロア内にビール等酒類の自動販売機が設置されているのをよく見かけるかと思いますが、このような場合、酒類販売免許の取得が不要とされるケースもあるようです。詳しくは保健所等への事前相談で確認しましょう。

④ 温泉利用許可

ホテル内の温浴施設で温泉水を使いたい場合に必要で、温泉水を浴用に使用するだけではなく、飲用に使用する際にも必要になります。

大きな浴場を有するホテルの場合、公衆浴場の許可も必要になるのではないか?という話も出ます。ホテルのサービスの一環であるうちは不要とされる場合が多いですが、これも事前に不要かどうか確認しましょう。

⑤ 製造たばこの小売販売業の許可

店舗、自動販売機を問わず、たばこの小売りを行いたい場合に必要になります。紙巻きたばこ以外にも葉巻や、IQOS(アイコス)やPloom(プルーム)で用いるたばこスティックも含まれます。

最寄りのたばこ販売店との距離が一定以上離れていなければいけないという制限や、取扱い予定高の設定、袋小路に面している不便な場所はダメ。など諸々の要件があります。場合によってはハードルが高くなってしまう場合も。

また、自ら輸入した製造たばこの販売を行いたいという場合は、製造たばこの特定販売業の登録というものが必要になります。

自身では許可の取得ができない、管理が大変。という場合は、別途タバコの小売販売業者が出張販売許可を受ける事で、運営するホテル内でたばこ販売が可能になる場合もあります。

これらの他にも営業したい、提供したいサービス内容によって必要な許可というもの出てくることでしょう。

上記許可を受けるためにも構造や設備基準というものがあり、完成した建物の構造次第ではそもそも許可を取れない。という場合も、旅館ホテル営業許可と同様に発生し得ます。

実際に菓子製造業の許可も併せて取りたかったけれども構造上無理だった…というケースもありましたし、○○県で大丈夫だったから××県でも大丈夫だろうと進めていたが、××県ではダメです。という事もあります。 

また、許可によっては資格の要件や研修を受けなければならないものもあり、場合によっては2カ月前以上から準備が必要なことも。

旅館・ホテルを営業しようとするときは、事前に専門家や行政に確認し、間違いなく予定している営業日に開業できるよう、抜かりなく準備しましょう。

いかがでしたでしょうか?一口に「ホテル・旅館業」と言っても、許可を取って営業をするには、注意すべき点が多岐に渡ることがお分かりいただけたかと思います。ただ、規模の大小はあれど、一定の要件を満たす物件があるのであれば、旅館業許可申請は決して狭き門というわけではありません。


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SATO行政書士法人では旅館・ホテル営業許可の申請や、旅館・ホテル営業に附随するその他必要な申請について申請書の作成・提出代行をさせていただきます。

こういう事をしたいのだけれどもこれは許可が必要?この許可を受けるために必要なものは何?といったご相談はもちろん、法人の設立や定款の変更、ホームページに掲載するプライバシーポリシー、旅館・ホテル営業で活用できる補助金のご提案まで幅広く対応させていただきます。

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ちなみに、ネットカフェは泊まれるのに宿泊業の許可は必要じゃないのか?

行ったことのある方はわかるかもしれませんが、ネットカフェには寝具が無いはずです。ですので「寝具を使用して施設を利用すること」に該当せず、旅館業の許可が必要ではない、という事になります。

布団や毛布も「寝具」とされる場合がありますので、ネットカフェや24時間営業のスパなどを営業する際はこれらを提供しないようにしなければなりません。どうしても提供したいなら旅館業の許可を取りましょう。

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